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英国の超お粗末な神経ガス攻撃ロシア犯人説

2018年4月7日   田中 宇

 3月4日、英国南部ソールズベリーで、ロシアから亡命してこの街に住んでいた元ロシア諜報機関員セルゲイ・スクリパリとその娘ユリアが、何らかの毒物らしきもののせいで、街なかのベンチで意識不明になり、病院に運ばれる事件が起きた。英政府(メイ首相、ジョンソン外相)は3月13日、ロシア政府がおそらくプーチン大統領の命令で、スクリパリ父娘を、旧ソ連製の化学兵器である神経ガス「ノビチョク」で攻撃したと発表した。 (Russia Refuses To Respond To UK "Ultimatum" Until It Receives Nerve Toxin Samples

 英国は、ロシアを制裁する意味で英国駐在のロシア外交官のうち23人を国外追放した。米国やドイツ、フランスなど合計20カ国が英国に同調し、合計百人以上のロシア外交官を追放した。ロシアも対抗して、英米などの外交官を追放した。この追放劇は1962年のキューバ危機以来の、欧米とロシア(ソ連)との激しい政治対立となった。 (After spy is poisoned, Britain mulls closing door to London for Russia's rich

 欧米や日本のマスコミでは「ロシア当局が、ノビチョクを使ってスクリパリ父娘を攻撃した」という英政府の発表を、そのまま確定的な「事実」として報じた。ウィキペディアでも、それが「事実」であるかのように書かれていた(最近ようやく両論併記型に書き直されたが)。実のところ、スクリパリ父娘を意識不明に陥らせたのがノビチョクであるという証拠は何も示されていない。英政府の国防科学技術研究所(Dstl)がスクリパリ父娘の血液を検査した結果、ノビチョクに違いないとすぐに結論づけ、それに基づいてメイ首相ら英政府が「ノビチョクによるロシアの犯行」と断定した。 (Poisoning of Sergei and Yulia Skripal From Wikipedia) (20 More Questions That Journalists Should be Asking About the Skripal Case

 だが英政府は、ノビチョクが犯行に使われたという具体的な証拠を何も出さず、そのノビチョクがロシア製であるという根拠も示さなかった。ロシア政府は英政府に、犯行現場に残っていたノビチョク関連の物証のサンプルを出すよう要請したが、英政府はその要求を無視し、その上で露政府に24時間以内の返答を要求した。当然ながら露政府は、英政府の要求を不当とみなして無視した。 (Russia Refuses To Respond To UK "Ultimatum" Until It Receives Nerve Toxin Samples

 被害者のスクリパリ父娘の容態は一時「2人とも意識が戻らず植物人間状態であり、蘇生する可能性がほとんどない。生命維持装置をいつ外すかという問題だ」などと報じられた。だが3月29日になると、娘のユリアが意識を取り戻し、集中治療室から一般病棟に移ったと報じられた。在英ロシア大使館が英政府に、ユリアと面会させろと要請したが拒否された。4月5日にはロシアのテレビ局が、ユリアと、ロシア在住のユリアの姪との間の電話の会話録音を放映した。ユリアは、父も元気になったと語っている。翌日には、圧力を受けた英政府もユリアのコメントを発表した。事件から3日後の3月7日にユリアがロシアのSMSであるVKにログインした痕跡があるとも報じられており、最初から重体でなかった可能性もある。 (Russian TV Releases Phone Call Of 'Poisoned' Yulia Skripal Saying Her And Her Father Are 'Fine') (Curiouser and curiouser: Yulia Skripal logged into VK while in coma

 ノビチョクは、同じく神経ガスであるVXの8倍の威力があると言われる。当日、神経ガスが散布されたのは、スクリパリの自宅(玄関ドア)もしくは近所の繁華街であるとされるが、これらの場所で猛毒の神経ガスがわずかに散布されただけで、父娘だけでなく、近くにいた通行人、ベンチで2人を見つけた第一発見者や医師ら、近所のペットや野鳥などが神経ガスにやられて死傷しても不思議でない。だが、2人以外で長く入院した人はいない。 (Russian Foreign Ministry: What Happened to Skripal's Pets, Why's UK Silent?) ("Do Not Leave Your Homes" - Sleepy UK Town In Lockdown As Army Investigates Russian Spy Poisoning

 事件当日、スクリパリの自宅を尋ねたひとりの警察官(Nick Bailey)が「神経ガスにやられた」として入院させられたが、1週間後に回復が報じられ、約2週間後に退院している。その他、当日の事件現場でスクリパリ父娘の応急措置や搬送、周辺警戒などに当たった22人の救急隊員や警官が病院で診察を受けたが、誰も問題なかった(警官の一人が「目がかゆい」症状を訴えた程度)。ペットなど動物の状況も報じられていない。 ('I'm no hero!': Police officer struck down by deadly nerve agent as he rushed to help ex-Russian spy and his daughter says he was 'just doing his job' as he recovers in hospital) (Are 'Novichok' Poisons Real? - May's Claims Fall Apart

 戦争用の神経ガスが使われたのなら、たとえ微量でも、もっと被害が大きいのがふつうだ。犯行に使われたのはノビチョクなど軍事用の強い神経ガスでなく、もっと影響が弱い何か別のものだった疑いがある。この場合、英政府は、最初に「ノビチョク」と言ってしまったのでその筋に固執せざるを得なくなり、実は何ともない警官を強制的に入院させ、化学兵器っぽい被害を演出した可能性すらある。当日現場近くに居合わせた人々がすべきことを尋ねたところ、英政府は、当日着ていた服を洗うことなどしか薦めなかった。 (Skripal case becomes even weirder) (Russiagate Comes to England

 もし英政府の発表通りノビチョクが使われたのだとしても、それがロシア製であるとか、ロシア政府が犯人であると言うことはできない。ノビチョクは旧ソ連時代に今のウズベキスタンで製造されていたが、すでにロシアは全量を廃棄し、国際機関OPCWもそれを確認している。むしろ、ウクライナやグルジアなど、ロシア以外の旧ソ連諸国が、冷戦時代からの継承でノビチョクを持ち、これらのロシア敵視諸国がロシアを陥れるために今回の犯行に及んだ可能性すらある。 (UK, Slovakia, Sweden, Czech Republic among most probable sources of ‘Novichok’) (Everything they won’t tell you about the poisoning of Sergei Skripal. Organized, simplified

 イスラエルの諜報機関によると、ノビチョクは20か国が保有しているし、英国自身もDstlがノビチョクの研究をしたことがある。また、米国に亡命した旧ソ連の化学兵器開発者(Vil Mirzayanov)が、米国でノビチョクに関する本を出版しており、そこには作り方まで書いてあるそうだ。アマゾンで本を買えば、誰でもノビチョクを製造できるという。 (Israel opts out of US-EU anti-Russian expulsions, its intelligence finds novichik stocks in 20 countries) (State Secrets: An Insider's Chronicle of the Russian Chemical Weapons Program

 ロシア政府は、英国の二重スパイになったセルゲイ・スクリパリを敵視しており毒殺の動機があるという説も、よく見ていくと間違っている。もともとソ連とロシアの諜報機関員だったスクリパリは、英国の諜報機関から誘われ、ロシアのスパイ情報を英国に流す二重スパイになった。それが04年にロシア当局にばれて、スクリパリは逮捕され服役していたが、10年に英露間のスパイ交換合意で釈放され、英国に亡命した。この経緯から、露政府はスクリパリを敵視していたという説になるが、殺す必要があったなら、ロシアの獄中にいる間に殺害してしまえたわけで、わざわざ英国で殺す必要はない。露政府には、スクリパリを殺す動機が欠けている。しかも、スクリパリが毒を盛られた3月4日は、ロシアの大統領選挙の2週間前だった。英政府は、プーチン大統領がスクリパリ毒殺を命じたと主張しているが、選挙前の微妙な時期に、再選を狙っていたプーチンが、自分の信用を落としかねない国際的な毒殺の犯行を命じるはずがない。 (Sergei Skripal From Wikipedia

 英政府は「スクリパリ親子の血液を検査した結果、ノビチョクが犯行に使われた」と言っており、そこからロシア犯人説の主張まで飛躍してしまったが、ノビチョクが旧ソ連で開発されたことを理由に、ロシア犯人説を語ることはできない。英政府から依頼を受け、化学兵器を調査する国際機関であるOPCW(化学兵器禁止機関)がスクリパリ事件に使われた毒物の調査を開始したが、OPCWは結論が出るまで3週間以上かかると発表している。調査結果は4月9日からの週に発表する予定だ。 (Tests of Substance in Britain Poisoning Will Take Three Weeks) (Did Putin Order the Salisbury Hit?

▼スクリパル事件は、トランプがプーチンに贈った花束もしくは強精剤

 事件から約10日後にノビチョクによるロシア犯人説を断定した英政府は、異様に拙速でお粗末だった。事件からちょうど一か月後の4月3日、スクリパリ事件の科学捜査を担当してきたDstlの幹部が「犯行に使われたノビチョクがロシア製であるとは断定できない」と正式に発表した。同日、事件以来ロシアをさんざん非難してきた英外務省も「ロシアが作ったノビチョクが犯行に使われた」と発表した3月22日のツイートを、何も釈明しないまま、削除した。英政府はロシア犯人説を引っ込めた。これを機に、ロシア政府が英国に対する非難を一気に強め、国連などに対し、スクリパリ事件の国際捜査態勢を作るべきだと提案した。英国が劣勢に、ロシアが優勢になっている。 (Porton Down experts unable to identify 'precise source' of novichok that poisoned spy) (Skripal poisoning: deleted Foreign Office tweet leads to awkward questions) (Why would @foreignoffice delete this tweet from 22 March?) (Is The UK Manufacturing Its Nerve Agent Case For 'Action' On Russia?

 ロシア敵視の偏向性がある米国のマスコミやシンクタンクは「スクリパリ事件はロシアが犯人だ。まだ出ていない、英外相も知らない決定的な証拠がある」といった思わせぶりな書き出しの記事を出しているが、中身を読むと、決定的な証拠について何も説明していなかったりする。何が何でもロシア犯人説を維持するのだという、英政府や米軍産の姿勢は、急速に無理があるものになっている。 (The Wild Card in the Russia Spy Case

 英政府が拙速でお粗末な動きをしたため、スクリパリ事件のロシア犯人説は、急速に信憑性が低下している。英国の国際信用が低下し、ロシアの対応の正しさが認知されつつある(マスコミがロシア敵視の歪曲をしていない諸国だけだが)。英国の呼びかけに応じてロシアの外交官を追放した欧米諸国は恥をかき、今後のロシア敵視がやりにくくなった。 (U.K. Has ‘Evidence’ Russia Is Secretly Developing Nerve Agents

 今回の失態は、慎重さを重視する伝統的な英国の外交姿勢と異なっている。英上層部の全員がきちんとやろうとしたが失敗したのでなく、英諜報界など上層部の中に、メイ首相やジョンソン外相に、間違った動きとしての拙速でお粗末なロシア犯人説の断定をやらせることを、最初から意図していた勢力がいる感じだ。メイやジョンソンは、英諜報界に騙されたと考えられる。一昨年のEUからの離脱を問う国民投票の際や、03年のイラク侵攻時、古くは50年代のスエズ動乱時にも、諜報界など英国上層部に、ニセ情報を流して国家戦略の失敗を誘発する反逆的な勢力がいた。

 今回、英政府を騙した勢力は何者か。その目的は何か。真相は永久にわからないだろうが、私なりに推測すると、タイミング的に、それからクスリパルがロシアゲートのスティール報告書のネタ元だった可能性があることから考えて、米国の諜報界のトランプ支持の勢力が黒幕な感じだ。英国は軍産複合体の一部(かつては元締め)だ。911以来の米国の軍産支配体制を壊すために大統領になったトランプは、軍産と結託する英国の敵でもある。

 16年春の時点で、米大統領選挙と英国のEU離脱投票はつながっていると言われていた。夏の英国の投票で離脱派が勝つと、秋の米選挙でトランプが勝つと言われており、そのとおりになった。当時の米英の2つの投票はいずれも、マスコミや権威筋が直前まで反対方向の歪曲報道(英国でEU残留派が勝ち、米国でクリントンが勝つとの予測)を出し続けて人々を騙し、敵方(米英覇権永続を望む軍産)を油断させ、米英覇権の低下・解体・放棄につながる英国のEU離脱と米国でのトランプ当選を実現した。 (英国が火をつけた「欧米の春」

 歴史的にも、第2次大戦中に、英国の諜報界(MI6)が米国の諜報界(OSS、CIA)を作っている。「一度でもCIAに協力した人は(辞めた後も脅されるので)ずっとCIAに協力せざるを得ない。CIAは足抜けできない(Once CIA Always CIA)」という格言(同様のことが、広義の諜報要員である各国の警察官、軍人、外交官、犯罪組織員などにもいえる)が示すとおり、諜報界の体制はなかなか変わらない。今も、米英(やカナダ豪州)の諜報界(軍産中枢)は一体のものだ(冷戦構造は彼らが作って運営していた)。 (CIAの血統を持つオバマ

 そして16年以来、米国でトランプ(覇権放棄派)と軍産(覇権固執派)の果し合いが続いていることから考えて、英国の諜報界や上層部にも同様の対立構造が存在している。英国の諜報界に、トランプ陣営とつながった反逆分子がいる、ということだ。そういった反逆分子が、今回のスクリパリ事件を(たぶんノビチョクでなくもっと無害な毒物を使って)引き起こし、メイやジョンソンといった英政府の上層部を騙してロシア犯人説を信じ込ませ、強烈な英露の敵対を誘発したうえで、ロシア犯人説は無根拠だったことが後で露呈していくように仕向け、国際社会における英国の威信のさらなる低下と、ロシアの影響力の増大を意図的に招き、トランプの覇権放棄と多極化の策を推進したのだと考えられる。スクリパル事件は、トランプがプーチンに贈った花束(もしくは強精剤?)だったわけだ。 (UK staged Salisbury assassination to rally anti-Russia support

 英政府がロシアの外交官を追放し、米欧諸国に追随を呼びかけた時、トランプの米政府も60人のロシア外交官を追放したが、その直後、米政府は露政府に対し、同人数の外交官を赴任させて60人分の職位を埋めるよう要請している。トランプの米政府は、かたちだけ英政府に追随したが、米露関係が悪化しないように配慮している。 (US Official Invites Russia to Replace Expelled Diplomats

 ロシア・ソ連への敵視は、もともと戦後の英国の地政学戦略だ(米英同盟がソ連と冷戦で恒久対立することで、英国の最大のライバルであるドイツを東西分割した上で、東ドイツをソ連に、西ドイツを米英に恒久隷属させた)。冷戦後も、英国は、米国の軍産と謀ってロシア敵視を維持している。ロシア敵視(米英)は、イスラム敵視(ISなどテロ組織を支援して永遠のテロ戦争を維持。米イスラエル)と並ぶ、軍産の覇権維持策だ。トランプは、これらの体制を壊したい。軍産はロシアゲートのスキャンダルをでっち上げ、トランプに圧力をかけて軍産系のマクマスターやティラーソンを側近として受容させ、トランプの政治的自由を剥奪していた。 (米覇権の転覆策を加速するトランプ

 だが今年に入ってロシアゲートのでっち上げ性が露呈し、トランプは2月から軍産系の側近を外していき、政治的な行動の自由を拡大した。その流れの中で、3月初めにスクリパリの事件が起き、英国と軍産によるロシア敵視の構図が崩れる傾向の結果を引き起こしている。ティラーソンの代わりに国務長官になったポンペオは、トランプの言うことを何でも聞く人で、CIA長官からの異動だ。ポンペオの後任でCIA長官になった(拷問女史)ハスペルも親トランプだ。トランプの権力が続くほど、CIA内部からトランプ敵視派が排除されていき、CIAがトランプの言うことを聞くようになっている。ロシアや東欧に「スクリパリに毒を盛ったのはCIAだ」と主張する政治家たちがいるが、あながち的外れではない。 (Polish Politician: Ex-Spy Skripal Was 'Highly Likely' Poisoned by CIA) (好戦策のふりした覇権放棄戦略

 今回の事件が諜報界の謀略(おはなし作り・歴史の捏造)であるとすると「なぜ被害者がセルゲイ・スクリパリなのか」「なぜ使われた毒物がノビチョクだと強調されたのか」といった疑問も出てくる。まずスクリパリだが、彼は、トランプを陥れるために軍産や米民主党クリントン陣営に頼まれて英諜報部員のクリストファー・スティールが作った「スティール報告書」のネタ元・情報集めをした人のひとりだったと言われている。スクリパリはスティールと親しかった。10年に英国に亡命後にスティールと親しくなったという説のほかに、2人は90年代からスパイとその手先の二重スパイとして一緒にロシアの諜報を暴く作業をしていたという説もある。スクリパリは英国亡命後も英諜報界のためにロシア関連の諜報活動を続けており、スティール報告書の作成に関与した可能性が十分にある。同報告書はネタ元がすべて匿名になっている。 (The Strange Case of the Russian Spy Poisonng) (Russian to Judgment: Who Poisoned Sergei Skripal? : Justin Raimondo

 米議会の共和党のトランプ支持派は今年に入り、スティール報告書のインチキ性を攻撃し、スティールの証人喚問や逮捕を求めている。スクリパリが報告書の重要なネタ元だったとして、それと今回スクリパリが暗殺劇の謀略の標的になったことがどう関連するのか、合理的な説明がつかない。だが、英諜報界のトランプ敵視派のスティールがスクリパリと親しかったこと、スクリパリが最近まで英諜報界のロシアの情報集めに協力していたことから、スクリパリがロシアゲートに関係していることが感じられる。この件は、いずれ追加の情報が出てくるだろう。 (UK probe of nerve agent attack on former Russian spy uncovers an active British agent) (ロシアゲートで軍産に反撃するトランプ共和党

 犯行に使われたのがノビチョクだったという「おはなし」が流布していることの意味は、もしかすると、化学兵器を研究してきた英国の軍隊系の国防科学技術研究所(Dstl)が、ノビチョクを研究開発していた、ロシアでなく英国自身の方が「犯人」の疑いが強いという話につながるかもしれない。Dstlは、事件現場のソールズベリーから8キロしか離れていないポートンダウンに研究施設がある。今回の事件の科学捜査を主導しているのもDstlだ。英国は98年以来、化学兵器を研究開発・製造していないことになっているが、Dstlがその後も化学兵器を研究開発していることが10年に発覚して問題になった。 (The UK Blames Russia for the Spy Poisoning: It’s Time to Set Our Emotions Aside and Look at the Facts

 今回の事件の科学的な真相究明が、国際機関のOPCWにゆだねられていることも、ロシアとの関係で見ると興味深い。OPCWは、シリア内戦での化学兵器使用も調査してきた。シリアでの化学兵器使用は、ISアルカイダとその傘下の市民団体のふりをした「白ヘルメット」などが、自分らで化学兵器を散布してシリア政府軍のせいにする米軍産肝いりの軍事作戦を続けてきた疑いがある。この件があるので、OPCWは当初、シリアで誰が化学兵器を使ったかについて慎重な判断を続けていた。 (Russia exposes flawed OPCW report into staged chemical weapons attack in Syria) (24 tonnes of toxic substances found in areas in control of militants

 だがその後、米軍産からの圧力が強まったのか、OPCWは2年ほど前から「犯人はシリア政府軍だ」と断定する傾向を強め、ロシアやイランなどが「それは結論を強弁しすぎだ」と言っても聞かなくなった。昨年秋以来、ロシアはOPCWの歪曲性への非難を強め、中国など非米諸国の支持を集めてOPCWとは別の国際的な化学兵器調査機関を作ろうとしている。この流れと、英国の今回の事件に対する真相究明の動きがどう関連していくかも興味深い。シリアの化学兵器の濡れ衣について最近かなり追加で調べたがまだ書いていない。改めて書く。 (いまだにシリアでテロ組織を支援する米欧や国連) (Russia Denied Request To Join OPCW Investigation Into Skripal Poisoning



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