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「田中宇の国際ニュース解説」2008年の記事一覧


これより後の記事(2009年の記事)

原油安に窮するロシア
 【2008年12月31日】プーチンのロシアは原油安によって窮しているが、間もなく窮状から劇的に脱出できるかもしれない。それはイスラエルが起こしたガザ戦争が拡大してイランも巻き込まれそうになり、ペルシャ湾地域の石油供給が不安になって原油価格が高騰しそうだからである。イランとイスラエルが戦争になったら、原油はすぐにロシアの望む75ドル以上まで跳ね上がるだろう。

オバマに贈られる中東大戦争
 【2008年12月28日】パレスチナ和平は、米国、EU、ロシア、国連という4者(カルテット)が仲裁している。米ブッシュ政権はハマス敵視で「ファタハとしか交渉してはいけない」という姿勢をイスラエルやEUに強要したが、もうすぐファタハが潰れ、ブッシュ政権も終わる。イスラエルとしては、オバマ政権がハマス敵視をやめることを前提に、カルテットにガザ停戦を仲裁させ、ハマスと和解したい。しかし、大統領がオバマに代わる時期にガザの停戦が切れ、イスラエルが戦争に巻き込まれるように設定したのは、ブッシュ政権の謀略である。イスラエルの思惑どおり停戦できるかどうかは怪しい。失敗すれば、中東全域を巻き込む大戦争になる。

世界的な政治覚醒を扇るアメリカ
 【2008年12月24日】米国が傲慢で抑圧的に振る舞うほど、イスラム世界や中南米などの人々が反米主義で結束し、バラバラだった中東や中南米に新たな政治的な「極」が生まれ、BRICとも連携し、多極的・非米的な世界体制を作る。「歴史上初めて、人類のほとんど全員が、政治的に活発になり、政治的に覚醒し、政治的に相互連携する」「植民地支配や帝国的支配によって抑制されてきた、文化的な尊厳や経済成長の機会を求める動きが、世界的に勃興する」とブレジンスキーは書いている。

オバマの多極型世界政府案
 【2008年12月16日】米オバマ新政権の世界戦略の原型となりそうなものが、今年9月に出されていた。民主党系のシンクタンク「ブルッキングス研究所」が中心に進めた研究事業「世界的不安定管理」の報告書「転換後の世界における国際協調新時代の行動計画・2009-10年とそれ以降」である。

チベットをすてたイギリス
 【2008年12月10日】今年10月末に英国外務省が「チベットは中国の一部だと、わが国は(前から)思っていた」「宗主権という概念を引きずりすぎた」という、1914年のシムラ協定を事実上破棄する声明を出したのは、チャーチル以来65年ぶりの、チベットに関する英国の態度表明だった。米国の覇権衰退の中で、やむを得ず発せられた今回の声明は、ユーラシア包囲網策の終焉になりそうだ。これは、地政学的な大転換となる。

09年夏までにドル崩壊??
 【2008年12月6日】欧州のシンクタンク「LEAP/E2020」が「ドルを基軸とした今の国際通貨制度(ブレトンウッズ体制)は、根本的な改革がなされない限り、09年夏までに制度崩壊する。体制の中心にいる米英が急速に弱体化し、米財政は破綻して、世界は非常に不安定になり、戦争や暴動が起きる」「世界がドルを見放したら、通貨制度改革の交渉もできなくなり、手遅れになる。世界の指導者は、3カ月以内に現状を把握し、6カ月以内に対策を決定する必要がある」とする予測を発表した。

ムンバイテロの背景
 【2008年12月2日】ムンバイで起きたテロに関し、インド国内のヒンドゥ過激派の組織が、治安当局の一部とぐるになって、イスラム教徒のふりをしてテロを挙行したという疑惑がある。マハラシュトラ州マレガウンで今年9月、爆弾テロ事件があったが、捜査当局の調べで、この事件は実はヒンドゥ過激派組織が犯人で、イスラム過激派がやったようにみせかけて爆破テロを挙行したことがわかっている。昨年、インドとパキスタンを結ぶ友好列車が爆弾テロに襲われて68人が殺されたが、この事件も同様に、イスラム過激派を装ったヒンドゥ過激派の犯行だったことがわかった。ヒンドゥ過激派の多くは、ヒンドゥ・ナショナリズムを掲げてパキスタン敵視を煽るインド人民党とつながっている。

米金融界が米国をつぶす
 【2008年11月28日】・・・金融機関どうしの共食いに、米当局はどう対処したのか。財務省や連銀、証券取引委員会などが、この事態を知らなかったはずはない。08年3月のベアースターンズ破綻時に、米当局がCDSつり上げと株空売りの策略に気づかなかったとしても、その後の調査では気づくはずで、9月のリーマン破綻やモルガンスタンレー危機が繰り返されるのは全く奇妙だ。米当局は、ベアスターンズやリーマンが金融機関の共食いによって潰されるのを容認したと考えざるを得ない。

中道派になるオバマ:組閣の裏側
 【2008年11月25日】 オバマ政権で予測される注目人事は、ヒラリー・クリントンの国務長官への就任である。この人事の意味は、軍産複合体とクリントン派の再対決である。オバマがクリントンを国務長官に就けるのは、軍産複合体に席巻されてしまうことを防ぐために、クリントンと軍産複合体をぶつけてバランスさせようとしているのではないかと考えられる。

転換期に入った世界経済
 【2008年11月18日】 G20サミットは、世界経済の中心がG7からG20に転換する時期に入る転換点になりそうだ。G20サミットが今の時期に開かれることになった理由は「米当局がリーマン・ブラザースを破綻させたから」である。リーマンのような債券金融界の要衝を潰すと、金融危機が拡大することは目に見えていた。リーマン破綻後、米政府は公金を使って非効率な対症療法を本格化させた。いずれ米国は財政破綻し、ドルは基軸通貨の地位を失うだろうと、欧州の当局者が考えるのは当然だった。

「世界通貨」で復権狙うイギリス
 【2008年11月13日】 英国は、ドル破綻後の世界戦略として、1944年のブレトンウッズ会議で英国代表のケインズが提案したものの、米国の反対によって実現しなかった世界共通通貨(国際決済通貨)「バンコール」構想の復活を目論んでいる。今後、いったんバンコールの焼き直し的な世界通貨が導入されると、世界の財布のひもは、いつの間にか英国に握られてしまう。英国は世界通貨のひもを握ることで、世界が多極化しても、何十年も世界の黒幕的な覇権国であり続け、金融的な儲けも得られる。米国が衰退しても、英国は繁栄し続ける。

操作される金相場
 【2008年11月7日】 金相場が下がっている限り、世界の資金は金地金の方に向かわず、ドル崩壊の引き金を引きかねない金高騰は防がれている。とはいえ、連銀が奨励する金キャリー取引がいつまで続くか、大きな懸念が存在する。懸念の一つは、世界的な不況突入で、米欧を中心に政策金利の引き下げが続いていることだ。利下げは、投資利回りの全般的な低下につながり、金キャリー取引の利ざやを縮小させる。

オバマと今後の米国
 【2008年11月5日】 オバマは11月4日の米大統領選挙で快勝した。多くの米国民が、これでブッシュ政権による無茶苦茶から脱却し、新たな時代が来ると期待している。しかし私が見るところ、ブッシュ政権はすでに、金融財政・軍事・外交といった米国の覇権を支える何本もの大黒柱に「時限爆弾」的な破壊のシステムをセットし終わっている。これらの爆弾は、オバマ政権になってから爆発する。

「ブレトンウッズ2」の新世界秩序(2)
 【2008年10月31日】 独仏がヘッジファンドやタックスへイブンを潰したい理由は、それによって世界の為替市場を安定させ、中国人民元やGCC(アラブ産油諸国)の共通通貨が、ドル連動から自立して国際通貨となる際の障害を取り除こうとしているからだろう。中国やGCCの政府は「為替を自由化すると、投機筋から攻撃され、暴落させられる」と懸念し、ドル連動から離れたがらない。ヘッジファンドを潰し、世界の大きな資金の流れをすべて当局が監督できるようにすれば、中国やGCCは為替を自由化でき、多極的な国際通貨体制を作れる。

米覇権衰退を見据える中東
 【2008年10月28日】 米国は、軍事力で中東の人々を震え上がらせ、支配してきた。中東の人々は、反米感情を募らせながらも、世界最強の米国にはかなわないと諦観してきた。ところが米国がイラク占領で自滅して撤退し、イランに対しても何もしないまま許すとなると、中東の人々は米国は弱くなったとみなし、オスマントルコ崩壊以来100年の欧米に対する怨念が噴出し、イスラエルも潰してしまえという気運が高まる。イスラム主義諸勢力の権威が高まる半面、エジプト、サウジアラビアなどの親米政権の正当性への疑いが強まる。中東は、100年の諦観を打破して自立した文明圏として蘇生する機会を手にする。

金融と革命の迷宮
 【2008年10月21日】 米国で、戦争ばかりやった政権の末期に巨大な金融危機が起こり、破綻しそうな金融機関に、政府が次々と資本を注入する今の事態は、マルクス経済学の視点で見ると、まさに独占資本主義から国家独占資本主義への転換を意味している。こんな状態が続くと、今後、マルクス経済学が再び学問として勢いを盛り返すこともあり得る。ただし、ソ連や共産主義時代の中国の失敗を踏まえて加筆し、新たな理屈を展開することが不可欠になる。

「ブレトンウッズ2」の新世界秩序
 【2008年10月17日】 救済策が効かないまま金融危機が深化しきそうな中で、米政府の財政赤字の急拡大は必至で、いずれ米国債は買い手が足りなくなって下落する。英政府が、ロシアやBRICを招く形で「第2ブレトンウッズ会議」を開くことを提唱したことは、英がドルと米国債の破綻を予期し、米覇権の終焉を覚悟したことを意味すると、私には思える。

金融危機対策の主導権奪取を狙う英国
 【2008年10月14日】 ブッシュ政権の中枢は、対策を後手後手に回らせたり、微妙だが決定的に間違った対策を打ったりして、意図的に米金融界を崩壊に向かわせている疑いがある。これを放置すると、第二次大戦以来60年続いてきた米英中心の世界体制が崩壊し、世界の覇権構造が多極化してしまう。それを防ぎ、従来どおりの米英中心の世界体制を復活維持するため、10月10日のG7会議を機に、英政府がEU(独仏)や日本を巻き込んで、国際金融対策の主導権を米から英に移す試みが行われている。1971年の繰り返しが画策されている。

CDSで加速する金融崩壊
 【2008年10月10日】 問題は、10月10日に行われるリーマン・ブラザーズのCDS清算会である。リーマンは倒産して消えたので、同社の約4000億ドルの発行済み債券の価値はジャンク化し、約400億ドルに下がった。清算会によって、CDS発行者はおそらく、総額3600億ドルの保険金支払いを義務づけられる。これは膨大な額だ。米金融界全体の不良債権を買い取る資金として米政府が用意した額が7000億ドルだった。その半分が、リーマン1社のCDSをめぐる損失だけで飛んでしまう。これで米大手金融機関がまた2つや3つ潰れても不思議ではない。

米経済の崩壊、世界の多極化(2)
 【2008年10月8日】 米住宅市況はしばらく回復の見込みがない。担保価値の底が抜けている状態の中で、米政府が債権を買い取って銀行を救済しようとするのは、底なしの井戸に石を投げ込んで埋めようとするような非効率だ。市場は、救済策の非効率さを察知し、株式市場は連日の世界的な急落となった。銀行間の相互不信は全く解消されず、金融システムの中心的な機能だった銀行間融資市場は、世界的にほとんど取引がない凍結状態だ。金融機関が資金調達する唯一の方法は、中央銀行からの融資のみとなっている。

米経済の崩壊、世界の多極化
 【2008年9月30日】 世界は、米の同盟国であるドイツの財務相が、米覇権の崩壊と世界の多極化を独議会で公言するような状態だ。BRICや北朝鮮、中南米、イスラム諸国なども、米覇権の崩壊をにらんで動き出している。それなのに、日本はいまだに対米従属一本槍で、世界の多くの人々がインチキと感じている米の「テロ戦争」に全面協力したいと今さら麻生新首相が国連で演説したり、自民党も民主党も自衛隊のアフガン派遣を検討したりして、えらく頓珍漢である。

国連を乗っ取る反米諸国
 【2008年9月28日】 ワシントンの米政界ではイラン敵視が依然として強いが、ニューヨークの国連総会では、今や欧米日以外の国々の多くが、イランより米英イスラエルの方が世界の平和と安定を壊していると考える傾向を強めている。西欧の世論も、米イスラエルの横暴への反感を強めているが、こんな状況になっても米政府自身は、非現実的な単独覇権的な態度を変えず、ますます外交的信頼を喪失している。これが金融崩壊・財政悪化による経済的信用の喪失と同時に起きていることがポイントだ。

全ての不良債権を背負って倒れゆく米政府
 【2008年9月22日】 米政府がリーマンブラザーズなどの破綻という「金融911」を誘発し、前代未聞の大盤振る舞いである金融大救済を開始したのだとしたら、その目的は、政府高官と議員たちによる壮大な私腹肥やしということになる。しかし、今回の金融大救済は、米政府の財政破綻で終わる可能性が大きい。ブッシュ政権の任期中は持つかもしれないが、次の政権の期間中に、米国債の破綻、ドル急落などが起きるだろう。911が、イラクとアフガンの占領の泥沼化など、米の軍事外交面の覇権の失墜につながったように、金融911は、米の経済面の覇権の失墜につながる。

銀行破綻から米国債破綻へ?
 【2008年9月20日】・・・9月17日には、米国債に対するリスクを示す指標が悪化した。債券のリスクはCDS(債券破綻保険)の価格(上乗せ金利)で示されるが、10年もの米国債のCDSは30ベーシスポイントにはね上がり、13ベーシスのドイツ国債、20ベーシスのフランス国債よりも高くなった。米国債は、ドイツ国債の2倍以上のリスクがあるとみなされるようになった。

ミサイル防衛システムの茶番劇
 【2008年9月17日】 茶番が続く理由は、米政界で軍産複合体が幅を利かせ、軍事予算の水増しを画策してきたからである。一般的な新兵器開発は、いつまでにどんな性能の武器をいくら使って開発するかという目標設定がなされているが、ミサイル防衛システムの予算にはこの制限がない。米議会は、開発が成功しているのか判断できないまま、毎年100億ドル以上の予算を計上している。その何%かは、軍事産業から議員への献金としてキックバックされる。政治家の役目は、イラク、イラン、シリア、北朝鮮、ロシア、中国など、ミサイルを作れる敵性諸国の脅威をできるだけ煽り、この構図を恒久化することだ。

リーマンの破綻、米金融の崩壊
 【2008年9月15日】 リーマンの破綻によって、米の金融危機は急に悪化した。他の投資銀行の先行きも懸念され、最も株価下落が著しいメリルリンチは、急遽バンカメに買収される交渉を開始した。債券で資金調達する投資銀行は、昨夏以来の金融危機(債券危機)で存続できなくなり、預金を集めて資金調達するバンカメのような商業銀行の傘下に入らざるを得ない。米の金融システムは、預金集めの伝統的システムが10兆ドル、レバレッジを使った投資銀行の「影の銀行システム」も10兆ドルの、計20兆ドルあまりだ。このうちレバレッジ金融の方が急速に崩壊している。

イラクの石油利権を中露に与える
 【2008年9月14日】 中国とロシアは、03年の米イラク侵攻に際し、反対の立場を表明した。侵攻直後、米政府は「米による侵攻に協力賛同しなかった国には、イラクの石油開発など経済の利権を与えない」と公言していた。イラク政府は、米の傀儡政権として作られた。にもかかわらず今回、イラク政府は、中国に石油開発権を与え、ロシアを開発の入札に招待した。

イスラエルの戦争と和平
 【2008年9月9日】・・・事態は冷戦派の勝ちとなるかに見えたが、ここでイスラエルは、驚くべき秘密の奇策を挙行した。それは「イスラエルに勝ってナセルのような英雄になりたい」と熱望するサダトに「戦勝」を贈呈すること、イスラエルがわざと負ける戦争をやることだった。こうして起きたのが1973年の第4次中東戦争(ヨームキップール戦争)だった。

覇権の起源(3)ロシアと英米
 【2008年9月3日】覇権国を英から米に移転させるだけでなく、英が作った「欧州諸国は国民国家として発展するが、欧州以外の国々は植民地として発展を制限する」という欧州限定の均衡戦略(小均衡)を、米主導の「世界中に国民国家を作り、世界中を発展させる」という限定なしの均衡戦略(大均衡)に拡大させる動きが、第一次大戦を機に試みられたと考えられる。ニューヨークの資本家たちにも支援されていたロシア革命は、その動きの一つだった。

覇権の起源(2)ユダヤ・ネットワーク
 【2008年8月29日】 イギリスが均衡戦略によって欧州の覇権国になれたことは、諜報と金融の国際的な「ネットワーク」を使って、イギリスが欧州大陸諸国の政治を外から操作できたことを意味する。イギリスに限らず「ネットワーク」を使いこなす勢力は、諸国の政治を操り、世界を間接支配できることになる。それを前提に考え直すと、国際政治は、常識的に考察されているものとは全く別の特徴を帯びる。まっとうな議論から排除されてきた陰謀論を視野に入れざるを得なくなる。

米に乗せられたグルジアの惨敗
 【2008年8月19日】 米はグルジアに130人の米軍顧問団を駐留させ、武器も支援してきた。サーカシビリ大統領は、ロシア軍との戦争になることが必須な南オセチアへの進軍を挙行する前に、米軍に話をつけたはずだ。米軍の方から侵攻計画を持ち掛けた可能性もある。サーカシビリは、米の軍産複合体との関係が深く、この関係性を背景に、NATO加盟運動や、ロシアとの敵対戦略を展開してきた。グルジアの軍事予算は3倍に増え、米仏イスラエルから武器を買い、南オセチアを軍事制圧する準備が行われた。

覇権の起源
 【2008年8月14日】 英を含む欧州各国は、キリスト教世界として同質の文化を持っていたので、英発祥の産業革命と、仏発祥の国民革命は、ロシアまでの全欧州に拡大した。その中で、ナポレオンを打ち負かして欧州最強の状態を維持した後の英は、欧州大陸諸国が団結せぬよう、また一国が抜きん出て強くならないよう、拮抗した均衡状態を維持する均衡戦略を、外交的な策略を駆使して展開し、1815年のウィーン会議から1914年の第一次大戦までの覇権体制(パックス・ブリタニカ)を実現した。

北京五輪と米中関係
 【2008年8月11日】 中国をめぐるブッシュ政権の動きは、日本では大きく報じられない。大々的に報じられると日本人の反米感情が煽られ、日本人を反米にしてアジアの方に押しやりたいブッシュ政権の思う壺だからだ。対米従属を続けたい日本政府は、日本人の反米感情が強まるのは困る。米中が世界最重要の2国間関係に向かう準備として、互いに大規模な大使館を建設したことも、日本ではまともに報じられなかった。日本人が「見ないふり」をしている間に、米は中国をアジアの地域覇権国に仕立てる動きを進め、日本の対米従属は空洞化させられている。

エネルギー覇権を広げるロシア
 【2008年8月5日】 ロシアは、ガスプロムを使って欧州をエネルギー面から締め上げ、反露的な態度をとれないようにして、欧米間の亀裂を深め、欧米中心の支配体制の解体を目指している。この戦略はプーチンが独裁で進めているのではなく、エリツィンが最初に必要性を感じ、適切な進行役としてプーチンを選び出して後継大統領にして、プーチンは経済が得意な側近のメドベージェフを登用してさらに戦略を進めるという、ロシア中枢の長期計画となっている。

イラン革命を起こしたアメリカ
 【2008年7月31日】 イスラム革命は、イラン国内の反米感情が高まってシャーが追放され、代わりに反米イスラム主義のホメイニが亡命先から凱旋して実現したと、一般には語られている。だが、当時の状況を詳細に見ると、シャーを追い出してホメイニに権力を与える画策をした張本人は、アメリカ(軍産英複合体)だったのではないかと思えてくる。

米とイランの急接近
 【2008年7月23日】 イスラエル政府は、アメリカを無視して周辺勢力との和解を進め、チェイニーが画策する「イスラエルにイランを攻撃させる」という策略を失敗させている。そこでチェイニーら米中枢は、イスラエルの和解策を妨害すべく、米自らがイランと仲直りする新戦略を採り出した。欧米がイランを悪者扱いする限り、イスラエルがヒズボラ・ハマス・シリアのイラン系3勢力と和解することは、3勢力をイランから引き離す方向に誘導する。しかし、米がイランを許してしまうと、3勢力はイランと関係を疎遠にする必要がなくなる。イスラエルは劣勢になる。

石油高騰の謎(2)
 【2008年7月19日】 米イスラエルによるイラン侵攻を主張しているのは、米チェイニー副大統領とネオコン、AIPACなどイスラエル系右派、イスラエルの右派野党リクードなどの好戦派である。今にもイラン侵攻を挙行しそうな勢いの話を米英マスコミに流し、原油価格をつり上げてきた高騰派は、彼らである。

アメリカ型金融の破綻
 【2008年7月12日】 レバレッジ型金融は、あらゆる債権債務を証券化し、世の中の金回りを格段に良くして、世界を「金あまり状態」にした。資金調達コストが下がって企業は倒産しにくくなり、倒産リスクが減った分、企業は債券を低金利で発行できた。この「リスクプレミアムの低下」を背景に、格付け会社はAAAの太鼓判を増やし、企業の資金調達が拡大し、金融界にとって好循環が続いた。昨夏の金融危機は、この好循環をくつがえした。格付けの信頼性は吹き飛び、リスクプレミアムは高騰した。投資銀行やヘッジファンドは、一気に儲からなくなった。

米英金融革命の終わり
 【2008年7月8日】 金融危機が進む中、レバレッジ型金融が持つリスクは、昨夏以前に考えられていたよりもずっと大きいということが、国際金融界の常識となりつつある。今後、レバレッジ型金融の本格的な復活はありそうもない。イギリスの銀行協会会長が6月初旬の講演で放った「レバレッジ終焉宣言」は、1980年代からの米英中心の金融革命の終わりを意味している。

通貨5極体制へのもくろみ
 【2008年7月1日】 世界の通貨体制は今後、ドルの単独覇権から、多極的な体制へと転換していく方に進みそうだ。既存のドル・ユーロ・円に、中国人民元とGCC通貨を加えた5極体制のほか、ロシアのルーブルも基軸通貨に立候補している。このような5極や6極の体制の中で、他国に従属する展望しか持たない唯一の国は、日本である。IMFは日本を「極」(大国)の一つに指定しているが、日本人自身には「世界の極の一つになる」という認識が全くない。日本政府は、対米従属を1日でも長く続けることだけを考え、世界の流れを意図的に無視している。

アメリカが中国を覇権国に仕立てる
 【2008年6月28日】 フレッド・バーグステンが提唱する、アメリカが中国との「G2サミット」の協調体制で世界運営をしていくことは、中国の背後にいるロシアなどBRIC諸国の全体と一緒にアメリカが世界運営をしていくという意味になる。米中のG2とは、アメリカが「非米同盟」に入るということであり、第2次大戦前にイギリスから植え付けられた米英中心型の世界戦略を捨て、多極的な世界戦略に移行することでなる。

日米安保から北東アジア安保へ
 【2008年6月24日】 北朝鮮の核問題が解決し、北東アジアに集団安保体制ができることは、アメリカの北東アジア戦略の大転換を意味する。日本と朝鮮半島にとって、朝鮮戦争以来の国際政治体制の大転換である。今後、日本に脅威を与えそうな周辺諸国との関係は、新安保体制の中で解消される方向が定着し、アメリカにとっては、米軍を日本に駐留させておく必要がなくなる。在日米軍の撤退と、日米安保同盟の解消が、次の段階として見えてくる。

ヤルタ体制の復活
 【2008年6月17日】 大国どうしが競っていた対立的な第一次大戦前の多極型とは異なり、今後予想される新ヤルタ体制(多極型の世界体制)は、世界に対する大国間の共同管理のような形を取る。これは旧ヤルタ体制で、すでに目指していたことだ。大国どうしが戦争して単独覇権を目指すという、戦前の動きとは逆方向である。世界は、今よりも安定するだろう。ただしその前に、窮したイスラエルやイギリスによる最後の逆襲的な戦争誘発があるかもしれない。

金融危機の再燃
 【2008年6月9日】 仮に今後、リーマン・ブラザーズが破綻し、ベアースターンズ破綻時のような迅速な救済買収が失敗した場合、3月末のような危機が再燃する。CDSなど金融破綻のリスクをヘッジする金融商品の全体が危険視され、金融機関の連鎖破綻が起こりかねない。総残高516兆ドルという、デリバティブ市場全体に対する信用不安が起きるとの見方もある。

維持される北朝鮮・イラン敵視策
 【2008年6月5日】 アメリカは、北朝鮮と国交を正常化せず、かといって「政権転覆」にも乗り出さない中途半端な状態を続けそうだ。この状態が続くほど、韓国と中国が、北朝鮮に支援や干渉をして安定化を維持することが重要になる。北朝鮮にとって最も重要なことが、従来の「アメリカとの国交正常化」から「中国や韓国との関係維持」に変わっていく。朝鮮半島の安定は、アメリカによってではなく、中国・韓国・北朝鮮・ロシアという、地元の国々によって守られる体制になる。

自衛隊機中国派遣中止を解読する
 【2008年6月1日】 中国への自衛隊機派遣の実現を、防衛省は強く望んだだろうが、外務省は阻止したいと思ったはずだ。結果として、外務省の意がかない、防衛省は残念がったわけだが、中国側との交渉を担当していたのは外務省である。外務省は、自分たちが望んでいない自衛隊機派遣を実現するために、全力で頑張ったのだろうか。それとも、頑張るふりをして、実際には中国側との不一致点が解消されずに残って話が潰れるよう、微妙かつ決定的な画策をしたのだろうか。

国父の深謀
 【2008年5月23日】 マレーシアは、アメリカが独裁的なイスラム諸国の政権を転覆する戦略を始めたことへの対策として、マハティールが10年画策した結果、UMNOと人民正義党の二大政党制になりつつある。台湾は、アメリカが中国との国交を正常化して見捨てられたため、国家的な生き残りのために李登輝が10年画策した結果、国民党と民進党の二大政党制ができあがった。これが、マハティールと李登輝という2人の国父の動きをめぐる、私の裏読みである。

イラン救援に乗り出す非米同盟
 【2008年5月20日】 BRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)の4カ国は、姿勢が異なるものの、アメリカが好戦的で身勝手な、国際法無視の単独覇権主義を貫いていることに対しては一様に、危険だと思っている。欧日など先進国が、アメリカの傍若無人を許していることも懸念している。この状況下、BRICの中でアメリカに最も敵視されているロシアが先導し、4カ国の外相会談が開かれた。ロシアは、アメリカのイラン侵攻の可能性を抑止する方向での解決策を提唱した。

石油高騰の謎
 【2008年5月14日】 ブッシュ政権が石油市場に原油投機の「抜け穴」を開け、ニューヨークの大資本家たちが石油価格をつり上げる共同作業の結果、ロシアやサウジアラビア、イラン、ベネズエラなどの産油国の国庫が潤い、これらの国々はアメリカの覇権に対抗できうるネットワーク(非米同盟)を強化している。欧米系の国々や日本、韓国など、アメリカ中心の覇権体制にぶら下がっている先進諸国は、法外に高いWTI価格で石油を買わざるを得ないが、その他の非米・反米の傾向がある国々では、政治的に設定されたもっと安い価格で石油を買える。

アメリカの覇権は延命する?
 【2008年5月10日】 昨年から今年にかけてアメリカの金融システムは急速に崩壊し、最近まで、世界の通貨や政治覇権の体制は多極化していくのだろうと感じられた。しかし最近、イギリスやイスラエル、米国内などの、米英中心主義の勢力の粘りの力は意外と強いと感じられるようになった。1970年代や80-90年代と同様、多極主義者の圧勝にはならず、一部は多極化が実現するが、一部は米英中心の世界体制が延命し、折衷的な状態が続く可能性が出てきた。

イスラエルとシリアの和平交渉
 【2008年5月2日】 イスラエルはイスラム側の敵対を崩せず、ゴラン高原を返還するだけ損なのに、何故にシリアと和平交渉をしたいのか。私が見るところ、イスラエルが得たいのは「時間的猶予」である。ブッシュ政権は、イスラエルに自滅的な戦争をやらせたい。だが来年1月にブッシュの任期が終わり、次の政権になったら状況が変わるかもしれない。それまでの9カ月間、ヒズボラやハマスが攻撃してこないよう時間稼ぎする方策として、イスラエルはトルコに仲裁を頼み、シリアとの和平交渉を準備しているのではないか。

隠れ多極主義の歴史
 【2008年4月27日】 ニューヨークの資本家たちは、世界の中心をイギリスからアメリカに移転させ、同時にイギリスだけが覇権国である体制を壊して、アメリカの他にいくつかの地域大国が並び立つ多極型の世界体制を目指したが、捨てられかけたイギリスが粘って延命策を続けた結果、覇権ころがしは途中で挫折して意外に時間がかかり、ニューヨークの資本家とイギリスとの、現在までの100年の暗闘になっているのではないか。

地球温暖化問題の裏側
 【2008年4月22日】 専門家たちに共通している見方は「地球の気候は大昔から何度も大きく変動してきた。多くの人がいろいろ調べてきたが、変動の理由は確定できず、まだわからない部分が大きい。あえて言うなら、人類排出の二酸化炭素による温室効果より、太陽活動の変化など自然由来の原因の方が大きそうだ。IPCCは、人類排出の二酸化炭素が主因だと断定しているが、これは間違った結論だ」というものである。

北京五輪チベット騒動の深層
 【2008年4月17日】 暴動というものは、何かきっかけがないと起きない。オリンピック前の重要な時期にチベット人を怒らせたくない中国政府は、チベット人をできるだけ懐柔し、暴動が起きないようにしていたはずだ。中国政府でもダライラマでもない何者かが、暴動を誘発したと考えられる。ダライラマ以外の亡命チベット組織の人々には、大した力はない。とすれば、最大の容疑者は、歴史的に亡命チベット組織を支援誘導してきた米英の諜報機関ということになる。

北朝鮮から「ねつ造する権利」を買ったアメリカ
 【2008年4月15日】 米政府が、北朝鮮にウソをつかせてまで「シリアへの核技術供与」を認めさせたいのは、シリアが核兵器を開発している話を、国際的な大問題に仕立て、イスラエルがシリアに戦争を仕掛けるのを正当化したいからである。アメリカは、シリアを「犯人」に仕立てるため、北朝鮮と「司法取引」をして、北朝鮮が「シリアも犯人です」という、米当局が作った「供述調書」に署名する代わりに、北朝鮮を罪に問わないことにした。アメリカは、国交正常化や経済援助という見返りで北朝鮮を買収し、シリアを攻撃する口実をねつ造する権利を買い取った。

台湾中国接近の時代へ
 【2008年4月11日】 台湾の総統に当選した馬英九は、中国との関係改善策を打ち出した。その戦略はまず、1992年に台中間で合意しかけた「中国は一つだという認識で合意するが、解釈は各自に任せる」(一個中国、各自表述)の合意を復活させる。それで対立の根本を解消した後、航空、観光、貿易など分野ごとに作られた台中間の連絡組織が緊密化を進める。観光客の相互訪問などを拡大し、対立を全体的に解消し、台湾経済の発展に結びつけるのが、馬英九の戦略だ。当選前から増えた海外から台湾への投資流入は、当選後さらに拡大し、冷却が必要となった。

中東大戦争は今週始まる?
 【2008年4月6日】 4月6日から、イスラエルで建国以来最大の規模といわれる軍事演習が開始された。敵とみなされたヒズボラやシリアの側では、イスラエルが演習の一環と称して国境沿いで軍事行動を行い、演習のふりをして、実際に攻撃を仕掛けてくるのではないかと警戒している。

ユーラシアの逆転
 【2008年4月2日】中東ではイランが優勢になり、アラブ諸国は親米から反米の方向に転換する傾向が続いている。ロシアやアフガニスタン、パキスタン、中国なども含め、ユーラシア大陸の全域で、米英が中露を封じ込め、日本や東南アジアには反中反露の姿勢をとらせ、イスラム世界を分断・傀儡化して親米の側につけておく米英中心主義の体制が弱まっている。逆に、中露が台頭しつつ結束し、上海協力機構などの非米同盟的な体制を通じてイランなどのイスラム世界を取り込み、米英の影響力は低下し、東南アジアは親中国を強め、日本は自閉的再鎖国に向かう、という多極型の体制が強まっている。ユーラシアは大きな転換期に入っている。

米露の接近、英の孤立(2)
 【2008年3月25日】 ユーラシア大陸の各地域では、地元の大国が中心になって安定維持や紛争解決をやっていくという多極的な覇権体制が浮上しつつある。ユーラシア全体を米英中心のNATOが面倒見て、米英を敵視するロシアなどを包囲するというイギリスの戦略は、存在する余地がなくなる。NATOがロシアの助けを受けてアフガンから撤退すると、NATOは「安楽死」にいたる。イギリスが戦後60年間、アメリカを操って黒幕的に維持してきたユーラシア包囲網の戦略は終わり、アメリカはようやく昔の不干渉主義に戻れる。

米露の接近、英の孤立
 【2008年3月22日】 ブッシュ政権は従来、欧米の軍事同盟であるNATOを率いてロシア包囲網を作り、ウクライナやグルジアといったロシア近傍の旧ソ連諸国をNATOに加盟させる、というロシア敵対策をとってきた。しかし3月17日に、アメリカのライス国務長官とゲイツ国防長官らがモスクワを訪問し、ロシア側と今後の戦略的関係について協議し、米露が劇的に和解しそうな感じが強くなっている。

ドルの崩壊が近い
 【2008年3月18日】 連銀による利下げや巨額の緊急融資は、金融危機の対策になっていないばかりでなく、通貨の観点から見ると、ひどい害悪だ。連銀が金融界に資金を注入するほど、ドルの発行量が増加し、世界はインフレになる。世界の多くの国々が、インフレ対策で利上げしているが、米連銀は利下げしているから、ドルと他の通貨の金利差は広がり、ますますドル安になる。最近、この悪循環に拍車がかかり、ドルの最終的な崩壊が近づいた観がある。

中東大戦争前夜(2)
 【2008年3月13日】 米軍のファロン司令官の辞任が発表されたのは、イスラエルのリブニ外相が訪米し、チェイニーに会った翌日のことだった。チェイニーは、イスラエルをけしかけてイランを空爆させたいと考えてきた。チェイニーは訪米したリブニに対し、一緒にイランを空爆して潰そうと提案し、リブニが了承したので、イラン空爆に反対してきたファロンを辞めさせたのではないか。3月16日からは、チェイニーが「イラン包囲網強化」を目的に、イスラエルなどを訪問する。リブニとチェイニーの相互訪問によって、イランやヒズボラとの戦争計画が決まり、4月までに開戦する可能性がある。

中東大戦争とドル崩壊の同期
 【2008年3月4日】 米連銀のバーナンキやグリーンスパン、そしてその反対側にいるイランやロシアの動きを見ると、米英イスラエルの中東覇権を自滅させる中東大戦争と、米英の経済覇権を崩壊させるドル危機は同期して動いている。アメリカの多極主義者は、米での過激な利下げ、イスラエルのガザ侵攻への誘導、GCCへのドルペッグ廃止勧告、コソボへの独立許可、トルコへの進軍許可、アハマディネジャドに対するイラク訪問容認などを通じ、中東大戦争とドル崩壊を同期させて動かしているような感じを受ける。

中東大戦争の開戦前夜
 【2008年3月1日】 ガザに対するイスラエル軍の地上軍侵攻が始まりそうな感じが高まっている。2月28日、ガザから国境沿いのイスラエル側の町スデロットに大量の短距離ロケット弾が発射され、スデロットにおける今年最初の死者が出た。イスラエルの軍や右派は、スデロットで死者が出たら、報復としてガザに地上軍侵攻すると言っていた。これまでロケット弾がほとんど飛んでこなかった国境から離れたアシュケロン市にも、ガザからイラン製のロケット弾が飛んでくるようになった。

資本の論理と帝国の論理
 【2008年2月28日】 イギリスが、アメリカを引っ張り込み、日独を潰して傘下に入れ、中ソを永久の敵にして、米英同盟が世界を支配する体制を1950年に完成させた時点で、1910年代からの資本と帝国の暗闘・葛藤は、いったんは帝国の勝利で確定した。ところが60年代に米経済の成長や欧日の復興が一段落した後、資本家は再び満足しなくなり、アメリカは70年代から20年かけて断続的に冷戦体制を壊していった。

タイミングの悪いコソボ独立
 【2008年2月26日】 アメリカにとって今は、ロシアがイランやシリアを応援せぬよう、ロシアを味方につけておくことが必要な時期だ。しかし実際には、米ブッシュ政権は、この時期をわざわざ選んだようなタイミングで、コソボを独立させ、ロシアを反米の方向に押しやった。「アメリカはロシアと戦争するつもりだ」と言う人もいるが、イラクやアフガンで占領の泥沼にはまり、NATO内も分裂している現状では、アメリカはロシアと戦争できない。

中東大戦争が近い?
 【2008年2月19日】 イスラエルがハマスやヒズボラとだけ戦っている間は、国家間の戦争ではない。従来から繰り返されてきたことでもあり、国際的な衝撃は比較的小さい。しかし開戦後、ヒズボラはシリアやイランから武器供給を受け、ハマスはエジプト(シナイ半島)から武器を搬入し続けるだろうから、イスラエルはシリアやイラン、シナイ半島を空爆する必要に迫られる。特にシリアとイランは従来からイスラエルの敵なので、戦争が拡大する可能性が高い。イスラエルが、シリアやイランを攻撃したとたんに、この戦争は中東全域を巻き込む。

米大統領選の焦点はテロ戦争の継続可否
 【2008年2月12日】 米中枢の諸勢力の中にはおそらく、テロ戦争に賛成の勢力と反対の勢力がおり、賛成勢力の押し切りで911が起こされてテロ戦争が始まったが、反対勢力がブッシュ政権を動かし、イラク戦争など各種のやりすぎによってテロ戦争を失敗させようとしている。テロ戦争をめぐる米中枢の暗闘は、大統領選挙にも反映されている。クリントンはテロ戦争の立て直しを目指し、マケインはブッシュ式のやりすぎを続けてテロ戦争を壊そうとしている。クリントン潰しのためにオバマを担ぎ出したのも、テロ戦争反対の勢力であろう。

アメリカ財政破綻への道
 【2008年2月6日】 軍事費は1980年代のレーガン政権下でも急増した。来年度予算はそれと同じパターンだ。レーガンは「小さな政府」を作るといって当選したが、軍事費を聖域化して急増させ、財政赤字を急拡大させてドル安を招き、アメリカの経済覇権を崩した。ブッシュも自分の任期後の2012年には年度の財政赤字がゼロになるように計画しているというが、これは全く口だけである。景気悪化と、メディケア(政府健康保険)の赤字増を勘案すると、2012年の米財政は今よりひどい大赤字になると予測される。

北朝鮮核交渉の停滞
 【2008年1月29日】 北朝鮮が核開発の内容について事実をアメリカに伝えたのに、アメリカが「それは事実ではない」「もっと多いはずだ」と言ったのだとしたら、北朝鮮は「ブッシュは信用できない。次の大統領になるまで待った方が良い」と考えて当然である。ブッシュ政権は、自分たちが北朝鮮の核開発について誇張してきたことを認識しているだろうから、核問題の解決に向けた動きを止めたのは、北朝鮮の意志ではなく、アメリカの意志である。

「ガザの壁」の崩壊
 【2008年1月25日】 イスラエルは1月17日から制裁的なガザ封鎖を開始し、ガザの人々の生活は急速に窮乏した。数日間の封鎖の後、1月22日にはラファの国境検問所のガザ側に数千人の人々がおしかけ、買い物に行きたいのでエジプト側に越境させてくれとエジプト当局と押し問答になり、銃の発砲があって死傷者が出た。混乱の末、エジプト政府は対応せざるを得なくなり、翌23日にラファの国境の壁が壊され、往来が自由化された。

アメリカ発の世界不況
 【2008年1月22日】 金融崩壊が続く限り、アメリカの不況は悪化する。少なくとも今年いっぱいは、タマネギの皮を一枚ずつむくように金融危機が拡大していくのではないか。金融崩壊が一段落した後、不況も一段落するだろうが、欠陥が露呈した以上、証券化のシステムが復活して米英経済が昨年までの強い状態に戻る可能性は低い。いずれ別の金融システムが構築されれば復活するかもしれないものの、米英経済は下手をすると今後10年は不振が続く。

イギリスの凋落
 【2008年1月15日】 アメリカと同様、イギリス経済の大黒柱は金融業である。証券化やデリバティブなど、英米共通の金融技術を使った高利回りの金融商品を買おうと、世界からの資金がロンドンに流入し、不動産価格は高騰する好循環が10年以上続いた。しかし昨夏の米金融危機以来、米英の強さの秘訣だった証券化は機能不全に陥り、ロンドンへの資金流入も細り、不動産も下落が始まり、ポンドも下がり続けている。イギリスの住宅価格の高騰幅はアメリカよりずっと大きいので、住宅バブル崩壊の被害もアメリカより大きくなると予測されている。

パキスタンの裏側
 【2008年1月8日】 実はアメリカは「クリントンが左からやって失敗したことを、ブッシュが右からやっている」だけだった。クリントン政権は正面からインドとパキスタンの指導者に和平を働きかけてイギリスに邪魔されたが、この教訓を受けたブッシュ政権は、イギリスの戦略に協力するふりをして意図的に過激にやりすぎ、イギリスの戦略を破綻させている。


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